「もっと自分に自信を持てたらいいのに」
「人と比べて、すぐに落ち込んでしまう」
「褒められても、素直に受け取れない」
そんな自分を見て、「私は自己肯定感が低いのかもしれない」と感じたことはありませんか。
「自己肯定感」という言葉は、今ではとても身近なものになりました。
けれど、自己肯定感が高いことは、「いつも自信満々でいること」でも、「自分のことを大好きになること」でもありません。
失敗する日があってもいい。
自信をなくすことがあってもいい。
誰かを羨ましく思ったり、自分の嫌なところが目についたりする日があってもいい。
それでも、一つの失敗や欠点だけで、自分という人間の価値まですべて否定しないこと。
自己肯定感は、そんな「自分自身をどう捉えているか」に関わる感覚です。
この記事では、自己肯定感とは何なのか、自己肯定感が低いときに見られやすい特徴、そして自分を少しずつ認めていくための考え方について紹介します。
自己肯定感とは?
自己肯定感という言葉にはさまざまな使われ方がありますが、この記事では、**「自分には価値があると感じ、自分自身を肯定的に受け止める感覚」**という意味で扱います。
心理学で研究されている「自尊感情(self-esteem)」にも近い考え方です。
大切なのは、「私は何でもできる」「私は誰よりも優れている」と思うことではありません。
できることもあれば、できないこともある。
好きなところもあれば、嫌いなところもある。
それでも、一部分だけを見て「だから私は価値のない人間だ」と決めつけない。
そんな自分自身に対する基本的な評価や感覚が、自己肯定感と深く関わっています。
自己肯定感が高い=自信満々ではない
自己肯定感が高い人と聞くと、
「いつも堂々としている人」
「何事にもポジティブな人」
「自分に絶対的な自信がある人」
を想像するかもしれません。
しかし、自己肯定感が比較的高い人でも、失敗すれば落ち込みます。
仕事でミスをすれば「やってしまった」と思いますし、人から否定されれば傷つくこともあります。
違いが表れやすいのは、その出来事を「自分の価値」とどこまで結びつけるかです。
たとえば仕事で失敗したとき、
「今回は失敗してしまった。次はどうすればいいだろう」
と考えるのと、
「失敗した。やっぱり私は何をやってもダメな人間だ」
と考えるのでは、大きく違います。
前者は「失敗した」という出来事を認めていますが、自分という人間のすべてを否定しているわけではありません。
一つの失敗と、自分全体の価値を分けて考えられること。
それも、自分自身を肯定的に捉えるうえで大切なことです。
自己肯定感と「自分を好きになること」は同じではない
「自己肯定感を高めるには、自分を好きにならないといけない」
そう思ってしまう人もいるかもしれません。
でも、必ずしもそうではありません。
自分の嫌いなところがあってもいいのです。
「ここは直したい」
「こういう自分は好きじゃない」
と思うことと、自分の存在そのものを否定することは別です。
嫌いなところがあるからといって、
「だから私は価値がない」
と考える必要はありません。
自己肯定感を育てることは、自分のすべてを無条件に「素晴らしい」と評価することではなく、自分を必要以上に低く評価しないことでもあります。
自己肯定感が低い人に見られやすい特徴
自己肯定感の低さには、決まった「診断基準」があるわけではありません。
また、ここから紹介する特徴が当てはまったからといって、必ず自己肯定感が低いとは限りません。
あくまで、自分自身への評価が低くなっているときに見られることがある傾向として考えてみてください。
人と比べて落ち込みやすい
誰かと自分を比べること自体は、とても自然なことです。
「あの人は仕事がうまくいっている」
「あの人は幸せそう」
「あの人は私よりきれい」
そう感じることは誰にでもあります。
ただ、その比較が、
「あの人はすごい」
で終わらず、
「それに比べて私はダメだ」
という自己否定につながってしまうと、苦しくなります。
他人が優れていることと、自分の価値が低いことは、本来別の話です。
誰かの成功によって、あなたがこれまで積み重ねてきたものがなくなるわけでもありません。
褒められても素直に受け取れない
「すごいね」
「よく頑張ったね」
と言われても、
「いやいや、全然」
「たまたまだよ」
「私なんて大したことない」
と反射的に否定してしまうことがあります。
もちろん、日本では謙遜としてこう答えることもあります。
しかし、心の中でも本当に「そんなはずはない」と思っている場合、自分に対する評価が必要以上に厳しくなっているのかもしれません。
自分の中に「私は大したことがない」というイメージが強くあると、それと一致しない肯定的な言葉を受け取りにくくなることがあります。
失敗すると自分そのものを否定してしまう
一つの失敗を、自分全体の評価に広げてしまうことがあります。
「今日、仕事でミスをした」
という出来事から、
「私は仕事ができない」
そして、
「私は何をやってもダメ」
と考えてしまう。
でも、本来そこには大きな飛躍があります。
「今回ミスをした」ということと、「自分という人間に価値がない」ということは同じではありません。
失敗は、あくまで一つの出来事です。
人から嫌われることを必要以上に恐れる
誰だって、できれば人から嫌われたくはありません。
しかし、他人からの評価が自分自身の評価と強く結びついていると、
「嫌われないこと」
が非常に重要になります。
本当は嫌なのに断れない。
相手に合わせて意見を変える。
自分が傷ついていても相手を優先する。
そんな行動が増えてしまうことがあります。
「この人に嫌われたら、自分には価値がない」
という感覚がどこかにあると、人間関係の中で自分の気持ちを後回しにしやすくなります。
「ちゃんとしなければ」と頑張りすぎる
自己肯定感が低い人が、必ず消極的とは限りません。
むしろ、とても努力家に見えることもあります。
「もっと頑張らないと」
「迷惑をかけてはいけない」
「ちゃんとしていなければ認めてもらえない」
そんな気持ちが、頑張る原動力になっている場合です。
努力すること自体は悪いことではありません。
ただ、
「今の自分では価値がないから頑張らなければならない」
という感覚が強いと、どれだけ頑張っても満足しにくくなります。
一つ達成しても、また次の「足りないところ」を探してしまうからです。
自分がどうしたいのか分からなくなる
周囲の期待や評価を優先することが習慣になると、
「私はどうしたい?」
という問いに答えるのが難しくなることがあります。
何を食べたいのか。
どんな服を着たいのか。
どんな仕事をしたいのか。
誰と一緒にいたいのか。
どんな人生を送りたいのか。
いつも「正解は何だろう」「周りからどう思われるだろう」と考えていると、自分自身の小さな感覚が聞こえにくくなってしまいます。
なぜ自己肯定感が低くなるの?
自己肯定感は、単純に「性格がネガティブだから低くなる」というものではありません。
これまで経験してきたことや人間関係、家庭環境など、さまざまな要因が関係しながら形づくられていきます。
子どもの頃の家庭環境や人間関係
子どもは、周囲の人との関係を通して、自分自身についてさまざまなことを学んでいきます。
温かく受け入れられた経験など、家庭環境のさまざまな要素と子どもの自尊感情の発達には関連があることが研究でも示されています。
一方で、
「もっと頑張りなさい」
「どうしてこんなこともできないの?」
「○○ちゃんはできるのに」
といった比較や否定を繰り返し経験すると、
「何かができなければ認めてもらえない」
という考えにつながる場合もあります。
ただし、ここで大切なのは、自己肯定感の低さをすべて親のせいにしないことです。
自己肯定感は親子関係だけで決まるものではありません。
学校生活、友人関係、本人の気質、成功や失敗の経験、社会環境など、さまざまなものが関係しています。
過去に否定された経験
いじめ、失恋、仕事での挫折、大切な人から否定された経験などが、自分に対するイメージに影響することもあります。
たとえば、
「あの人から愛されなかった」
という経験が、
「私は誰からも愛されない人間なんだ」
という考えに変わってしまうことがあります。
でも、この二つは同じではありません。
前者は過去に起こった出来事ですが、後者はその経験から生まれた「自分についての解釈」です。
自分が信じていることが、必ずしも事実とは限らないのです。
SNSで他人と比較する機会が増えている
SNSでは、他人の生活を簡単に見ることができます。
旅行。
結婚。
仕事での成功。
きれいな部屋。
おしゃれな食事。
楽しそうな友人関係。
ただ、そこに映っているのは、その人の生活の一部分です。
SNSそのものが必ず自己肯定感を下げるわけではありませんが、SNS上で自分より恵まれているように見える人と繰り返し比較すると、自分を低く評価するきっかけになることがあります。
「みんなは幸せそうなのに、自分だけ何もない」
と感じたときには、
「私は、この人の人生のどの部分を見ているんだろう?」
と考えてみることも大切です。
自己肯定感を高めるための考え方
自己肯定感は、スイッチのように突然「高くなる」ものではありません。
また、常に高く保たなければならないものでもありません。
自分自身に対する考え方や接し方を少しずつ見直していくことが、自分を肯定的に捉える感覚につながっていきます。
「自己肯定感を高めなきゃ」と思いすぎない
少し矛盾しているようですが、
「自己肯定感を高くしなければならない」
と思いすぎないことも大切です。
「自己肯定感が低い私はダメ」
と自分を否定しながら、自己肯定感を高めようとすると、
「今の自分ではいけない」
という考えをさらに強めてしまうことがあります。
落ち込んでいるなら、
「今は落ち込んでいるんだな」
自信がないなら、
「今は自信がなくなっているんだな」
まずは、それくらいでも構いません。
変えようとする前に、今の自分の状態に気づくところから始めてみましょう。
「事実」と「自分への評価」を分ける
自分を責めそうになったときには、「事実」と「評価」を分けて考えてみます。
たとえば、
「今日、仕事でミスをした」
これは事実です。
一方、
「だから私は仕事ができない人間だ」
これは自分に対する評価です。
同じように、
「恋人と別れた」
という出来事と、
「私は誰からも愛されない」
という考えは同じではありません。
私たちは、自分の頭の中で繰り返した言葉を、いつの間にか「事実」のように感じてしまうことがあります。
そんなときは、
「これは本当に事実なのかな?」
と、一度問いかけてみてください。
自分への言葉を少しだけ優しくする
失敗したとき、
「本当にダメだな」
「なんでこんなこともできないの」
「もっと頑張れよ」
と、自分を責めてしまうことがあります。
もし、大切な友人が同じ失敗をして落ち込んでいたら、同じ言葉をかけるでしょうか。
きっと、
「そんな日もあるよ」
「今回はうまくいかなかっただけだよ」
「次に活かせばいいよ」
と声をかけることもあるでしょう。
その優しさを、自分自身にも少しだけ向けてみる。
心理学では、失敗や苦しみを経験している自分に思いやりを向ける姿勢を「セルフ・コンパッション」と呼びます。
セルフ・コンパッションと自己肯定感は同じものではありませんが、互いに関連する考え方です。
無理に「私は素晴らしい」と思おうとするのではなく、
「失敗したけれど、必要以上に自分を傷つけなくてもいい」
と考える。
そんな接し方も、自分との関係を整える助けになります。
小さな「自分で決める」を増やす
自分の感覚を取り戻すために、大きな人生の決断をする必要はありません。
「今日は何が食べたい?」
「どっちの服を着たい?」
「今日は出かけたい?休みたい?」
そんな小さなことからで十分です。
誰かから見た正解ではなく、
「私はどうしたい?」
と自分に聞いてみる。
そして、できる範囲でその答えを尊重してみます。
自分の気持ちを聞き、自分で選ぶ経験を積み重ねることは、
「自分の気持ちも大切にしていい」
という感覚につながっていきます。
「できなかったこと」だけを数えない
一日の終わりに、
「あれができなかった」
「今日もサボってしまった」
と反省することはあっても、
「今日できたこと」
については、ほとんど考えない人もいます。
朝起きた。
仕事に行った。
ご飯を作った。
犬の散歩に行った。
疲れていたから休んだ。
嫌だったことを一つ断れた。
誰かに「ありがとう」と言えた。
大きな成功だけを「できたこと」にする必要はありません。
一日の終わりに一つだけでも、
「今日の私は、何ができただろう?」
と振り返ってみてください。
自分に対する評価が「できなかったこと」だけに偏っていないか、見直すきっかけになります。
他人の評価と自分の価値を切り離す
どれだけ誠実に生きていても、すべての人から好かれることはできません。
優しい人を、
「思いやりがある」
と感じる人もいれば、
「優柔不断」
と感じる人もいます。
自分の意見をはっきり言う人を、
「頼もしい」
と感じる人もいれば、
「きつい」
と感じる人もいます。
同じ人を見ても、評価は人によって変わります。
つまり、他人からの評価は、あなたという人間の価値を測る絶対的なものではありません。
誰かに嫌われたからといって、あなたの価値が減ったわけではない。
反対に、誰かに褒められたから、突然あなたの価値が生まれたわけでもありません。
他人の評価は大切な情報になることもあります。
でも、それを「自分の価値そのもの」にしなくてもいいのです。
自己肯定感には波があっていい
昨日は自分のことを認められていたのに、今日は急に自信がなくなる。
そんなこともあります。
仕事がうまくいかないとき。
大切な人との関係に悩んでいるとき。
心や体が疲れているとき。
大きな環境の変化があったとき。
自分に対する感じ方が揺れることはあります。
自己肯定感は、一度高くなれば一生変わらないというものではありません。
人生の経験や環境などと関わりながら変化する可能性があります。
だから、
「また自己肯定感が下がった。私はダメだ」
と責める必要はありません。
そんなときは、
「今の私は少し自信をなくしているんだな」
と気づくだけでもいいのです。
自己肯定感を高めることより「自分を見捨てない」
自己肯定感という言葉を知ると、
「もっと自分を好きにならなければ」
「もっと自信を持たなければ」
と思ってしまうかもしれません。
でも、自分を好きになれない日があってもいいのです。
自信を持てない日もある。
誰かと比べてしまう日もある。
失敗して、
「自分なんて」
と思ってしまう夜もあるでしょう。
そんなときに、
「こんな自分じゃダメだから、もっとちゃんとしなきゃ」
と自分を突き放すのではなく、
「今日はうまくいかなかったね」
「今はつらいんだね」
と、自分自身の気持ちを認めてみる。
これは厳密には自己肯定感そのものというより、セルフ・コンパッションにも通じる考え方です。
けれど、自分との関係を整えていくうえで、とても大切な姿勢の一つです。
自分を肯定するということは、いつでも自分を高く評価し続けることではありません。
うまくいかないときにも、自分まで自分の敵にならないこと。
自分を見捨てずにいること。
そんなところから、自分との関係は少しずつ変わっていくのかもしれません。
まとめ|今の自分を否定するところから始めなくていい
自己肯定感は、
「私は素晴らしい」
「私は何でもできる」
と思い込むためのものではありません。
できることも、できないこともある。
自信のある日も、自信をなくす日もある。
人を羨ましく思うこともあれば、自分のことを嫌いになる瞬間もある。
それでも、一つの失敗や欠点だけを理由に、
「だから私は価値がない」
と自分のすべてを否定しなくていいのです。
もし今、自分のことを好きになれなくても、無理に好きになろうとしなくて大丈夫です。
まずは、自分を責める言葉を一つ減らす。
自分の気持ちを一つ聞いてみる。
今日できたことを一つ見つける。
そんな小さなところから始めてみてください。
変わってもいい。
迷ってもいい。
遠回りしてもいい。
「自己肯定感の高い人にならなければ」ということさえ、新しい正解にしなくていいのです。
今の自分を否定するところから始めるのではなく、今ここにいる自分を知り、少しずつ付き合っていく。
その積み重ねが、自分らしく生きていくための土台になっていくのではないでしょうか。
